私たち、幸せに離婚しましょう~クールな脳外科医の激愛は契約妻を逃がさない~

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 病院二階の北側の一角に、バルコニーがある。

 開放的ではあるが椅子もないし、特に眺めがいいわけでもないので、人があまりいないのが逆に魅力の場所だ。

 そこでお茶でも飲んでひと息つこうと沙月は階段を使い二階へ上がった。

 つまらないミスをしてしまった。

 ふと右手が気になり左手でさする。

 夕べ主真が重ねた手の温もりがいつまで経っても消えないような気がした。

 まさか誕生日を気にかけてくれているとは思わなかった。自分ですら忘れていたのに。

 沙月の首元には、夕べ主真がつけてくれたネックレスがある。

 混み合うエレベーターの中で、主真にすっぼりと包まれた。高鳴る胸の音が聞こえてしまうんじゃないかと、心配になるくらい。

 彼はただ優しい人なだけで、特別な感情があるわけじゃない。夫としてすべきことを忠実にこなしてくれているのだ。

 そう自分に言い聞かせても、胸の鼓動は少しも落ち着いてくれなかった。

(まいったなぁ)