私たち、幸せに離婚しましょう~クールな脳外科医の激愛は契約妻を逃がさない~

 身長は一五七センチ、やや痩せ気味の中肉中背。母親譲りの顔は、真顔でも他人からは微笑んでいるように見えるらしく、いつも楽しそうだね、かわいいねと言われたりするが、自身が思うに、見た目も内面もこれといって特徴のない、ごく普通の二十六歳だ。

 とはいえ薄羽病院といえば、地域では脳に心配があればまず薄羽へ、と言われる有名病院である。そこの創業者一族の令嬢となればお嬢様に違いない。

 だが、本人がごく普通だと自覚しているとおり、病院でも分け隔てなく、ほかの職員と肩を並べて経理事務についている。

 午後三時過ぎ、休憩しようかと伸びをしたとき、ふと隣の席の同僚女性が、沙月に一枚の紙を差し出した。

「沙月さん、これなんですけど……」

 困ったように眉尻を下げる彼女から受け取ったのは、領収書である。

「わかりました。預かりますね」

 継母の不敵な薄笑いを脳裏に浮かべつつ、沙月は小さく溜め息をつく。