私たち、幸せに離婚しましょう~クールな脳外科医の激愛は契約妻を逃がさない~

「あの子はおそらく医者にはなれないだろう。言ってあきらめるような子じゃないから、好きにさせただけだが、まず無理だ」

 父の話では、成績から言っても卒業すらままならない。ましてや国家試験が受かるはずもないという。

 華子や美華から聞いていた話と随時違う。

「忙しさにかまけて、ちゃんと沙月と話をしていなかったからな」

 申し訳なさそうに父は「すまなかった」と言った。

「やめてお父さん、謝らないで。お父さんはずっと忙しかったんだもの。でもどうして? 私の医大進学は反対したでしょう?」

「責任感の強い沙月に、重荷を背負わせたくはなかったんだ。それよりも沙月には幸せな結婚をして、穏やかな毎日を送って欲しかった」

 そんなふうに思ってくれていたとは。

「お父さん……」

 熱い思いが込み上げて泣きそうになる。

「ゆっくり話をしようと思っていたのに、日々に追われてしまった。ごめんな、沙月」

 溢れた涙を慌てて拭う。

 父が倒れるまで、沙月が父と話をする機会はほとんどなかった。