私たち、幸せに離婚しましょう~クールな脳外科医の激愛は契約妻を逃がさない~

 相変わらず痩せてはいるが元気そうで、沙月は安堵の溜め息をつく。

「お父さん」

「ああ、来たのか」

 勝手知ったる個室である。冷蔵庫に買ってきたゼリーやヨーグルトを入れて、籠の中にお菓子を補充した。

「調子よさそうでよかった」

「ああ、のんびりしているからな」

 父はもう一生分働いたのだ。脳神経外科医はもう引退し、復帰後は理事長として無理なくがんばってほしいと沙月は思っている。

「主真くんはどうだ? 薄羽でなにか困っていないか?」

「大丈夫みたいよ。体力的には全然余裕があるって言ってたし、病院の環境に不満はなさそう」

 もとはといえば設備投資が経営不振の原因にもなっているだけに、薄羽の設備は充実している。初めて主真が薄羽の施設を見たときも感心していた。

 またしても継母のMRI購入問題が胸に影を落としたが、ひとまず疼きを飲み込んだ。

「なにも心配ないよ、お父さん」

 父は満足そうに「そうか」と、うなずく。