私たち、幸せに離婚しましょう~クールな脳外科医の激愛は契約妻を逃がさない~

 朝食をとりながら今日の予定など他愛ない会話をして、彼女が作ってくれた弁当を持って家を出る。

 結婚を決めた当初はこうなるとは思ってもいなかった。

 接点は最低限でいい。

 あくまで契約を受け入れたというだけ。二年後は離婚する。そして俺は再びアメリカに発つ。

 今でもその気持ちは変わらないし、今後も変わらない。

 二年後、やっぱり別れたくないとか。彼女の気持ちが変わらないよう警戒し、夫婦としての性的な関係はまったくない。

 たとえ一緒に暮らしていても極力接点を持たないつもりだったのに……。

 たった十カ月で、気づけばあったはずの垣根が崩れてしまった。

(なぜこうなったんだ?)

 グラスの中で立ち上る泡を見つめながら、主真は答えを探った。なにかきっかけがあったはず。

(あっ、そういえば……)

 結婚して間もなく、気になることがあった。

 ハウスキーパーを雇うはずが、彼女は申し訳なさそうに自分で家事をしたいと言い、その一方で彼女の継母がこう聞いてきた。

『主真さんが紹介したという家政婦さんは、どちらの方なの?』