私たち、幸せに離婚しましょう~クールな脳外科医の激愛は契約妻を逃がさない~

 沙月の父も和食派だった。継母も妹も白飯が好きではないので、父が不在なときはパンとサラダという洋食だったが、沙月も和食が好きだ。なので彼が和食派なのはちょうどよかった。

 そして、わりとしっかりめの朝食には理由がある。

 彼は脳神経外科医である。毎日オペがあるわけではないとはいえ、彼がいつ次の食事にありつけるかわからない。家で取る朝食は、とても大切なのだ。

 今朝も彼の箸は止まることなく進んでいる。

 沙月は満足して、温泉卵をスプーンですくう。

「昨日の弁当、助かったよ」

(えっ?)

 ハッとして顔を上げると、主真と目が合った。

「美味しかった」

「それは、よかったです」

 昨日は長時間に渡る難しいオペがあると聞いていたので、出がけにお弁当を渡した。

 戸惑う主真に『無駄になってもいいですから。よかったら食べてください』と、半ば強引に押し付けたので、そんなふうに言われるとは思っていなかった。

「えっと……今日も、持っていきますか? おかずはあるし」