私たち、幸せに離婚しましょう~クールな脳外科医の激愛は契約妻を逃がさない~

***



 患者の容態が落ち着き、主真が帰路に就いたのは十一時頃だった。

 その時間に落ち着いて食事ができる場所は限られている。

 車を走らせて向かった先は、友人氷室仁の店レストランバー『氷の月』。開店は夜の九時から朝の八時まで。仁が客を選んでいるため、気を遣わずに安心できるし、腕のいい料理人がメニューにこだわらずなんでも作ってくれる。

 帰りが十時を過ぎてゆっくりと食事をとりたいときには、氷の月に行く。

 ドアベルを鳴らしながら入ると、カウンター席にいる仁が振り向いた。

「いらっしゃーい」

 仁の隣に腰を下ろす。

「酒は?」

「タクシーで来た。飲むよ」

 医療従事者にはオンコール待機というものがある。患者の急変などに合わせていつでも対応できるようにするためだ。

 医師の働き方改革が求められている昨今、薄羽では院長兼理事長が過労で倒れたのもあり、オンコールは少ない。主真も週一日程度である。

 喉が渇いているので、主真は生ビールを頼んだ。