私たち、幸せに離婚しましょう~クールな脳外科医の激愛は契約妻を逃がさない~

 ちょっと寂しいけれど、それは仕方がないのだ。

「沙月さん」

 後ろからポンと肩を叩いてきたのは、沙月と仲のいい同い年の看護師だ。

「お疲れ様」

「沙月さんったら、今旦那さまに見惚れていたでしょ」

 にやにやしながら冷やかされ、思わず赤面した。

「そ、そんなんじゃないって」

 実際見惚れていたわけで動揺を隠せない。

「仲よさそうに話したりして、もうーやけるぅ」

 やいのやいのとからかわれて、ますます顔を赤らめながら沙月はバタバタと早足で事務室へと向かった。

(もー、本当にそんなんじゃないのに)

 沙月と主真は、二年という期限付きの仮面夫婦だ。

 縁談がもちあがったきっかけは、ここ薄羽病院の経営不信にある。

 今から二年ほど前、薄羽病院の理事長を務めていた沙月の祖父が亡くなり、沙月の父親が暫定的に理事長になった。

 その時点で経営は傾いており、それでなくても忙しい現役の外科医である父は、医者の不養生と言うがまさにそのとおり、過労で体調を崩し倒れてしまった。