私たち、幸せに離婚しましょう~クールな脳外科医の激愛は契約妻を逃がさない~

 どんなふうに、どれほど大変だったとか聞いてみたいが、沙月はその気持ちを飲み込んだ。病院での彼の時間は患者のためにある。貴重な時間を自分が止めてはいけない。

「これ、良かったらどうぞ?」

 自販機で買ったばかりのカフェオレを差し出した。

 なにか話さなきゃいけない気がして思わず言ってみたが、彼はブラック派だ。きっといらないだろうと思った。ところが――。

「いいのか?」

 彼は断らなかった。

「はい。まだ温かいですよ。どうぞ」

「サンキュー」

 口角をわずかに上げて、カフェオレのボトルを受け取った彼は、おもむろにキャップを開けてごくごくと飲む。

 そして軽く息を吐くとカフェオレを盛ったまま「じゃ」と歩き出した。

 沙月は彼の背中を半ば呆然と見つめた。

(びっくりしたー)

 まさか甘いカフェオレを受け取るとは。しかもここで開けて飲むなんて。

「疲れてるのかな……」

 思わずぽつりと呟いた。