私たち、幸せに離婚しましょう~クールな脳外科医の激愛は契約妻を逃がさない~

 窓際にいるふたりを覗き込んだ彼女は「よかったですね」と微笑む。

 彼女の話によれば男性は先週、脳動脈瘤の緊急手術をした患者だそうだ。経過は順調で、間もなく退院らしい。

「さすがですね、青葉先生。とっても難しいオペだったんですよ」

(主真さんの患者さんだったんだ……)

 さっき冷やかされたときもだが、沙月はこんなとき、どんな顔をするのな正解なのか、よくわからない。

 本音を言えば『そうなんですよ!凄いですよね』と強く同意したいところだけれど、夫を褒めるのは憚られるし、かといって『たいしたことありませんよ』と下げるのも違う気がする。

 ただ夫が褒められれば、やはりうれしい。これはどんな妻でも共通のはずだ。たとえ沙月が仮初めの妻であったとしても――。

「そうですか」と無難に返した沙月は、うつむきがちに照れながら微笑んだ。

 ちょうど廊下の先から、噂の〝青葉先生〟が現れ、こちらに歩いてくるのが見えた。