私たち、幸せに離婚しましょう~クールな脳外科医の激愛は契約妻を逃がさない~

 彼が薄羽に来て間もなく、沙月が聞いたときに言っていたのだ。『薄羽先生の指導がスタッフに浸透していて、働きやすいよ』と。

「ほんとですか? うれしー。青葉先生は腕がいいだけじゃなくて素敵だし、存在そのものが目の保養だもの。あ、大丈夫ですよ沙月さん、青葉先生は私たちを看護師としてしか見てませんから」

「べ、べつに私は……」

「今日も愛妻おにぎり、青葉先生美味しそうに食べてらっしゃいましたよー」

 どう返したものか困り果て、あたふたする沙月を看護師が「このーこのー」と、肘打ちして冷やかしてくる。

 ますます顔を赤くする沙月は逃げるように先を急いだ。

(よかった)

 さっきの彼の柔らかい話し方と表情を見れば、心配など杞憂だったのだ。

 今朝だって、沙月が作ったお弁当を美味しいと褒めてくれて、お礼に夕食に誘ってくれた。

 冷徹に思えたとしても、彼は優しさも気遣いもある。

 目的は果たしたし、長居は無用である。ホッとしたところで喫茶コーナーに目を留めた。