私たち、幸せに離婚しましょう~クールな脳外科医の激愛は契約妻を逃がさない~

 肩をほぐしながら廊下を進み、そのままエレベーターで一階の事務室に戻ろうとして、足を止めた。

『主真さん。スタッフから煙たがられてるのよ。お前の耳には入らないでしょうけど、困ったものだわ』

 意地悪な継母の話を信じるつもりはないが……。

 沙月はキュッと唇を噛む。

 主真の褒め言葉しか、沙月の耳に入ってこないのは事実だ。妻に対して夫の評価の言葉を選ぶのは当然だし、みんな言いたいことを我慢している可能性はある。

 主真が無愛想なのは否定できない。

 布施のようにご機嫌取りや愛想笑いをする人じゃないし、傲慢だと受け取られることも、もしかしたらあるかもしれないと思い、じっと階段を見つめた。

(この時間、主真さんは手術室か、医局にいる)

 結婚してから、沙月はなるべく彼がいそうなところには近寄らないようにしていた。

 普通の夫婦のように自然に会話を交わす自信もないし、些細なことから仮面夫婦であるのがバレても困るからだ。

(ちょっとだけ様子を見ようかな)