私たち、幸せに離婚しましょう~クールな脳外科医の激愛は契約妻を逃がさない~

 ヒューヒューと冷やかされて、頬を染める沙月の手を取り、主真がうれしそうに頭を下げた。

「皆さんありがとう」

「いえいえ、どういたしまして」

 見送られながら、沙月は主真に促されて助手席に乗る。

 抱える花籠から、甘い花の香りが鼻孔をくすぐった。

(こんなにしてもらって、申し訳ないな)

 主真が後ろの席に載せた荷物は、皆がくれた生まれてくる子のための赤ちゃんグッズだ。

 このまま沙月は実家に行く。

 昨日、実母の実家から、祖父母が来てくれた。華子が家を出て間もなく、以前薄羽家で働いていた家政婦が再び来てくれている。

 だから、なんの心配もない。

「さあ、行くぞ」

「はい」

 見送る皆に手を振って、車が走り出す。

 それから一週間後。沙月は男の子を出産した。