「は? なんなのその態度」
いきり立つ華子はパシッと沙月の手を払う。
「主真さんと結婚してからお前は性格が変わってしまったわね」
「主真さんは関係ありません」
受け取りを拒否された領収書をテーブルの上に置き、「待ちなさい!」と声をあげる華子に背を向けて、沙月は理事長室から出た。
「沙月!」
扉の向こうから響く華子の怒声を背に、やれやれと溜め息をつく。
華子が言うように、結婚前の沙月は彼女に従順だった。
だが、結婚して性格が変わったわけじゃない。家の中が荒れるのは嫌だったから、ずっと猫を被っていただけだ。
でももう我慢する必要はない。
この先たとえ離婚しても家に帰るつもりもないし、言うべきことはしっかりと言うと決めている。ましてや父は入院中なので、華子が父にあたる心配もないのだから。
とはいえ元来争いを好まない性格なので、攻撃的な華子を相手にすると疲れる。
まだ陽は高いのに、すでにぐったりだ。



