私たち、幸せに離婚しましょう~クールな脳外科医の激愛は契約妻を逃がさない~

「な、なにを言っているんですか? どうして布施さんが」

 締まりかけたドアを咄嗟に開けた。

「せっかく来たのですから、お茶くらい出していただけませんか?」

 口調は柔らかだが、相変わらず目の奥は冷たく光っている。

「いいえ。帰ってください」

「つれないなぁ。身重のあなたをお腹の子どもごと受け入れようと言っているのに」

 きっと華子の差金だ。

 これ以上は危険である。荷物が中にあるのは気がかりだが、ともかく今は離れたほうがいい。

そのまま外に出ようと沙月が背中を向けたのと、布施が動いたのは同時だった。

「きゃあ!」

 後ろから手を掴まれ、引っ張られる。

「沙月!」

 後ろに倒れそうになりながら、無意識に前に差し出した手ががっしりと掴まれた。

「主真さん」

「もう大丈夫だ」

 主真が警察を呼ぼうとすると、布施が慌てた。

「ご、誤解ですよ。い、嫌だな。――つ、沙月さんのお継母さまに、頼まれただけですよ」

(やっぱり、そうだったのね)