嘘をつくつもりだった。悪女になってでも別れるつもりでいたけれど、アツ・ヘルスや父の話まで出てきては、嘘もでてこない。
力が抜けると同時に涙がこみ上げてきて、止める気力もなかった。
「ああ、ごめんな。沙月」
抱きしめられて、主真の胸の中に顔を埋め、沙月はひとしきり泣いた。
「主真さんを、薄羽に縛りつけちゃいけないと思ったの」
正直に言えば、わかってくれるかもしれない。
自分の望みは、主真に自由な未来を歩んでほしいのだと心から伝えれば、その気持ちを汲んでくれるはず。
「私、主真さんの、足枷に、なりたくないの。だから」
主真は沙月の体を離した。
「足枷になんて、なるわけがないだろう? 君の存在が俺を強くするんだぞ?」
涙を堪えて、沙月は首を左右に振る。
「知ってるか?沙月。君は俺の初恋なんだ」
(えっ?)
「俺はこの年まで恋を知らずにきた」
思いもよらない告白に、ハッとして顔を上げると、主真がにっこりと微笑む。



