華子の遠い親戚である秘書は、彼女の言いなりだ。華子が白いものを黒と言っても大きくうなずくだろう。
(理事長じゃない。理事長〝代理〟でしょ)
理事長はあくまでも沙月の父だ。胸の内で突っ込みつつ、沙月は視線と気持ちを窓の外に向ける。
今日は秋晴れだ。郊外の病院に入院中の父も、この青い空を見ているだろうか。
「少しばかり顔がいいからって」
強い味方を隣に、華子による主真への誹謗中傷は勢いを増す。
脳神経外科のスタッフたちから嫌われているとか、患者に対して冷酷で、怒らせてしまうとか――。
「お父様がいないのをいいことに、この病院を乗っ取るつもりかしら」
「そうかもしれませんね」
さすがに呆れて、沙月は華子を振り向いた。
(乗っ取ろうとしているのは、あなたじゃないんですか?)
これ以上は聞くに耐えられない。
「とにかく今後は品目を必ず書いてください。そうでないと経費にはできません」
きっばりと言い放ち、沙月は領収書を華子の胸もとに向けて差し出した。



