私たち、幸せに離婚しましょう~クールな脳外科医の激愛は契約妻を逃がさない~

 居場所は父にしか言っていないし、主真からの電話は取っていない。 ひとりで静かに週末を過ごした。

 出産は実母の実家、祖父母を頼って、向こうで出産しようかと思っている。

 そのほうが安心できるから。

 お腹を摩って「いいよね」と、呟いた。

「ごめんね、赤ちゃん。生まれる前からお父さんを奪ってしまって……」

 でもね、その分私が何倍も愛するから、と心で続けた。

 明日から病院に行けば、主真と顔を合わせるかもしれない。それは避けられないけれど、物理的に距離が離れれば、少しずつ心の距離も離れていくだろう。そう思ったのに――。

 月曜の朝、病院に行くと、主真が沙月の席に座っていた。

 すでに事務室に出勤していた面々が、何事かとチラチラ見ている。

「沙月、ちょっといいか?」

「――はい」

 向かったのは沙月かよく気晴らしに使う二階のバルコニーだった。

「子どもができたのか?」

 まさかもう知っているとは思わず、ハッとしたまま顔を背けた。

「そうです……」