離婚届を引き出しにしまい、沙月は家を出た。
ひとまず家を出て、あらためて離婚を切り出そう。
自分勝手だとわかっているが、主真と話す自信がなかったのだ。
父に連絡をして、まずは実家に帰った。
主真との結婚は、実は自分からお願いした二年間という約束の結婚だったことや、妊娠の報告。そして自分には彼と結婚生活を続けていく自信がない話をした。
父は時折うなづきな質問しながら、話を聞いてくれた。
『わかったよ、沙月、お父さんはなにがあっても沙月の味方だ』
怒りもせず、優しく微笑んでくれたのだ。
『今まで苦労かけたね。もう大丈夫だよ』
『お父さん……』
緊張で強張っていた肩の力が抜けて、気づけば涙が溢れていた。
父の部屋を出て、華子に離婚の報告をしたまでは予定通りだったが、悪阻をきっかけに継母に妊娠がわかってしまった。
嫌な予感がしたが、隠したところでいずれわかってしまう。仕方がない。
簡単な手荷物を持ち、密かに借りたウイークリーマンションに行った。



