私たち、幸せに離婚しましょう~クールな脳外科医の激愛は契約妻を逃がさない~

 どんなに考えても答えはでない。

「そういえば薄羽夫人の実家アツ・ヘルス、本格的にヤバいらしいぞ」

「えっ? なにかあったのか?」

 以前も評判がよくないと仁から聞いていた。代替わりしてから様子がおかしくなったと。

 新社長と意見が合わず、まず重役たちが離れていったそうだ。その後、ほんの一時業績を上げたが、蓋を開けてみれば大量のリストラによる人件費削減だけによるもので、そんな状態が続くはずもない。

「外資系と合併の話が出ていたが、間際になって決裂した。アツ・ヘルスの粉飾決済がバレたそうだ。噂になったしもしかすると逮捕もあるかもな。薄羽と取引がある以上、気をつけたほうがいいぞ」

「わかった。ありがとうな、仁」

 沙月に時間が必要なら、その間にやるべきことがある。
 薄羽を守る。沙月のためにも。

 沙月は何よりも薄羽を大切に思っている。今は会えなくても必ず病院には来るはずだ。


 ようやく気持ちを切り替えた主真は、箸を伸ばした。

「ブリか」

 艶々とした厚みのあるブリから香ばしい醤油の香りが立っている。

「ああ、脂が乗っていて美味いぞ」

 口にすると、忘れていた食欲が呼び起こされたようだ。

(沙月が戻るまでに、ひとつずつ片付けよう)