私たち、幸せに離婚しましょう~クールな脳外科医の激愛は契約妻を逃がさない~

 ローストビーフに伊勢エビも見えるが、主真は気に留める様子も見せず、美華を冷ややかに見下ろした。

「えっと、お皿と、ワイングラスはこれでいいですよね」

 美華は断りもせずキッチンに入り込み食器棚を開けて、次々と皿やカトラリーを取り出してはテーブルに並べていく。

「沙月は?」

「うーん。私にもよくわからなくて」

「実家にいるんじゃないのか?」

「いたけど、さあ? どこかにでかけたから」

 のらりくらりと美華は答える。

「鍵はどうしたんだ?」

「もちろん、お姉さんに渡されましたよ? 離婚するから、主真さんをよろしくって。そんなことより、さあ、飲みましょう。なかなか手に入らないワインをいただいたんです」

 あまりに勝手な行動に呆れるばかりだ。
 立ったまま腕を組んだ主真は、これ見よがしに大きく息を吐いた。

「医学部に通う君に、そんな余裕はないんじゃないのか?」

「ああ、大学なら辞めました。私がわざわざ医者になる必要はありませんもの」

 実は医師仲間から噂を聞いていた。
 美華はわがままで、協調性もなければ努力もしない。『あれはどう考えても無理だぞ』と皆が口を揃えていたのだ。

「帰ってくれ」

「えっ、で、でも」