急患は緊急手術となり、帰ったのは明くる日の昼過ぎだった。
オンコールでももない土曜日なので、たっぷり時間はある。
一晩経って、沙月の気持ちも変わっているかもしれないと密かに期待しつつ、なぜ沙月が離婚を言い出したのか、ゆっくりと話を聞こうと思った。
『ずっと一緒にいよう』
自分の気持ちははっきりと伝えてある。
迷いは感じたものの、沙月の気持ちが主真にないとは思えない。愛おしみ抱いてキスをして、沙月もまた潤む瞳で応えてくれたはず。
いったいなにがあったのか。
逸る気持ちを抑え玄関を開ける。
「ただいま」
靴を脱ぐ前に嫌な予感がした。
沙月が歩いてくる物音はしないし、やけに静かすぎる。
リビングのテーブルの上に手紙が置いてあった。
【ごめんなさい。
実家に帰ります。
沙月】
これだけではなにもわからない。
急ぎスマホを取り出し電話をかけたが、メッセージが流れるだけで沙月はでない。
とりあえず沙月の実家に行くべきか?
考える間もなくピンポンとインターホンが鳴り、続けてドアを開ける音がする。
ひとまず電話を切り、玄関方向を振り向いた。
「沙月?」
なぜインターホンを?と思いつつ急いで廊下に向かうと――。
「こんばんは、主真さん」
廊下からリビングの扉を開けたのは、沙月の妹、美華だった。
「夕ご飯私が作ったんですよ。こう見えて私、お料理が得意なんです」
言うなりダイニングテーブルに置いたのは、風呂敷に包まれていた重箱だ。
美華は一段ずつ横に並べる。



