私たち、幸せに離婚しましょう~クールな脳外科医の激愛は契約妻を逃がさない~

「青葉の家が欲しいお嫁さんは、どれだけ青ノ葉大学病院に利益をもたらせるか!」
 美華は顎を上げて、語気を強める。
「わかる? 家事なんかできなくていいのよ。お姉ちゃん知らないでしょ? 主真さん、本当は今すぐにでもアメリカに行きたいのよ?」

「いい加減にして」

 なおも話が続きそうな美華を押しのけ、逃げるように理事長室を出た。

 後ろ手に閉じた扉から、美華の甲高い笑い声が響く。

 悔しさに唇を噛んで足早に廊下を進む。

 言い返せなかった。

 見合いの場で、二年後に離婚という条件を言わなければ、この結婚は断られて終わったに違いないから。

 ついさっきバルコニーで見た、守山のあきらめたような視線が胸に渦巻く。

 彼と自分は、同じだ。

 過小評価とかではなく、事実として沙月にはなにもない。

 沙月の実母の実家はごく普通のサラリーマン家庭だった。実母の両親は今、地方都市で静かに年金暮らしをしている。

 誰にも言っていないが、沙月は休みをとったときに時々祖父母のところに行っている。