私たち、幸せに離婚しましょう~クールな脳外科医の激愛は契約妻を逃がさない~

 気がかりだった両家への正月の挨拶も無事済んだ。

 去年は新居の準備に追われて過ぎた正月だったから、夫婦としてお互いの実家を訪問するのは、今年と来年の二回だけ。
 たったの二度だと思えば華子の嫌味もうまくやり過ごす自信はあったが、万が一矛先が主真に向かったらと気が気でならなかった。

 沙月が着物を着なかった華子の責めを、彼はどう受け取ったのか。

『来年はふたりで着物を着るか?』

 薄羽家からの帰り道、主真が不意にそう言ってにっこりと微笑んだ。

『着物にお揃いがあるかどうかわからないが、今度の休みにでも一緒に見に行こう』

 素直にうれしかった。

(主真さんが好き)

 心の中で呟くと、それだけで胸が苦しくなる。

 もうこの気持ちは抑えられない。

 唇を重ねたあの瞬間、心に掛けたはずの鍵が外れて溶けた。
 熱い想いは止めどなく溢れるままで……。

 クリスマスの夜だけなら、ここまで深く恋の沼に落ちずに済んだだろうか。

 甘い夜を重ねる度に、深みにはまっていくような気がしてならない。

『ひとりで寝るには今晩は寒すぎるだろう?』