私たち、幸せに離婚しましょう~クールな脳外科医の激愛は契約妻を逃がさない~

 結婚し入籍したのが去年のクリスマス。彼の誕生日でもあった。

 それから十カ月ほど経つが、あんなに素敵な人が自分に夫だという実感はない。

(まあ、条件つきの契約だから結婚できたわけだしね)

 そうでなければ、自分と彼が結婚するなど太陽が西から上がる以上にありえないわと、沙月は溜め息をつく。

「――聞いてる? 沙月?」

「えっ? あ、すみません」

「ぼーっとしていないで、お菓子をいただきなさいな。並んで買ってきてくださったんですってよ」

「はい。いただきます」

 華子に睨まれて、慌てて北海道のお土産というお菓子を食べた。

 焼き菓子は、軽く歯をあてただけなのに口の中でホロホロと崩れる。

 美味しいに違いない。並んで買ったというのだから。

 でも、布施が買ってきたと思うだけで味覚がなりを顰め、砂を食べているようだった。

「お口に合いますか?」

「ええ、とても……」

 菓子に罪はないが、美味しいとは言えず言葉を濁した。