私たち、幸せに離婚しましょう~クールな脳外科医の激愛は契約妻を逃がさない~

『ああ、そうですか……。ではまたの機会に』

 差し出された手を無視するわけにもいかず握手を交わすと、彼は強く握ってきた。

 考えてみれば男性に触れたのは、あのときが初めてかもしれない。

 ずっと女子校だったし、厳しい門限があったから男性と接する機会はこれまでなかったせいか、まるで支配されそうな強さを感じてとても怖かった――。

 あの日感じた恐怖心を思い出し、ごくりと喉が音を立てる。

「布施さんが持ってきてくださった北海道土産のお菓子よ。とても美味しいの」

「ありがとう、ございます」

 形式的に礼を言い、紅茶に手を伸ばして主真のことを考えた。

 微笑みを絶やさない布施と違って、主真はにこりともしないし冷徹と言われる。けれども、彼の瞳は暖かい色を帯びている。

 お見合いの席で彼と向かい合ったとき、彼は想像を超えるほど素敵で唖然とした。

 父から『いい男だぞ』と聞いていたし、渡されたスナップ写真も確かに美男子ではあったけれど、本人は沙月の予想の遥か上をいっていたのだ。