「十分経過」
脳の動脈を一時的に遮断するため、時間は限られている。
あと十分以内に直径三ミリの血管をつなぎ合わせなければならない。
残すところ数針、主真は慎重に針を進める。
「十五分経過」
何十回と重ねたシミュレーション。焦りはない。
十七分と三十秒。
血管に血液が流れ始め脈を打つ。七時間に及ぶバイパス手術は、無事終わった。
更衣室で術衣を脱ぎ、脱衣カゴに入れるとようやく肩の力が抜けてきた。
ぐるり首をほぐし軽くストレッチをして廊下にでる。
「青葉先生、お疲れ様でした」
「お疲れ様」
スタッフをねぎらい、患者の家族と話をして医局に戻った。
医局の休憩コーナーでコーヒーを飲みながら、主真は時計を見た。
時刻は夕方の六時。沙月はちゃんと寝ているだろうか。



