私たち、幸せに離婚しましょう~クールな脳外科医の激愛は契約妻を逃がさない~

『でもむしろそれでいいのよ、ちゃんと私が沙月さんの相手を探しておいたわ。今回のお見合いは練習だと思いなさい。あなたの結婚相手はこの人よ。とても優秀な方で、信頼できる人だから安心しなさいな』

 そしてある日、華子は一緒に参加した講演会で、沙月に布施を紹介してきたのだ。

『もしよろしければ、この後お茶でもどうですか?』と布施が誘ってきた。

『あら、よかったわせっかくだから帰りも送ってもらいなさいな』

 華子はこれ見よがしに沙月に布施を押し付け、自分はさっさと帰ってしまった。

 三日後に主真との見合いを控えていたというのに、布施と沙月をふたりきりにしたのである。

 布施の顔立ちはそう悪くはない。

 だが、表情に浮かべた微笑とは真逆の凍てつくような視線に、沙月は背筋がゾッと凍る思いがした。本能が、この男は危険だと警鐘を鳴らしたのである。

 では行きましょうと歩き出したところで、咄嗟に電話があったふりをして断った。

『も、申し訳ありません。急用ができてしまって』