私たち、幸せに離婚しましょう～クールな脳外科医の激愛は契約妻を逃がさない～

　華子は声を弾ませるが、沙月は少しもうれしくない。

　憂鬱な気持ちのみまま薄く微笑み、瞼を落とす。

　気持ちを落ち着けようとして、膝の上で重ねた手の左手薬指にはめた結婚指輪を、右手でくるくると回した。

　指輪に刻まれた文字は【Ｋ to Ｓ】沙月の夫は青葉主真で、布施道夫ではない。

（私は結婚したんだもの、もう平気よ）

　華子は沙月を布施と結婚させようとした。

　彼女は沙月に主真との縁談が来たとき、当然のように主真から断られると思っていたのである。

『沙月さん、青葉さんはどんな縁談も断ることで有名らしいわ。アメリカ帰りの優秀な脳神経外科医で、おまけに青ノ葉大学病院の御曹司となれば、結婚相手は選び放題だものね』

　ついでにいえば年齢は三十二とまだ若く、スラリとしたモデル並みのイケメンだ。

　沙月自身も、自分には過ぎた相手だと思った。