金額は一万円近く、但し書きが品代になっているこの領収書を持ってきたのは、現在療養中の父に代わり、理事長代理を務めている沙月の継母、華子の秘書だという。
品代ではなにを購入したのかわからない。消耗品なのか贈答品なのか勘定科目のつけようがないので何度も注意しているが一向に変わらない。
華子には変える気などさらさらないのだ。
「理事長室に行ってきますね」
「お願いします」
困り顔の女性に笑顔をむけた沙月は、ずっしりと重たく感じる領収書を手に、理事長室へ向かう。
沙月の実母が病で亡くなったのは、沙月が七歳のときだった。
父が再婚したのはその三年後。
当時、薄羽の理事長だった祖父が持ってきた縁談で、華子はまだ三歳の娘、美華を連れてやってきた。
物腰が柔らかい綺麗な人で、三歳の美華は可愛らしかった。
新しい家族が増えると聞き、十歳の沙月はワクワクと胸を躍らせたものだ。その気持ちは長くは続かなかったが――。
理事長室の前に立った沙月は大きく息を吸う。
品代ではなにを購入したのかわからない。消耗品なのか贈答品なのか勘定科目のつけようがないので何度も注意しているが一向に変わらない。
華子には変える気などさらさらないのだ。
「理事長室に行ってきますね」
「お願いします」
困り顔の女性に笑顔をむけた沙月は、ずっしりと重たく感じる領収書を手に、理事長室へ向かう。
沙月の実母が病で亡くなったのは、沙月が七歳のときだった。
父が再婚したのはその三年後。
当時、薄羽の理事長だった祖父が持ってきた縁談で、華子はまだ三歳の娘、美華を連れてやってきた。
物腰が柔らかい綺麗な人で、三歳の美華は可愛らしかった。
新しい家族が増えると聞き、十歳の沙月はワクワクと胸を躍らせたものだ。その気持ちは長くは続かなかったが――。
理事長室の前に立った沙月は大きく息を吸う。



