仄かに香るメロウ


雑貨屋"sign"には専用駐車場がない為、近くの有料駐車場に車を停めるとわたしたちは歩いて雑貨屋を目指した。

「あ、ここ!」

わたしが雑貨屋"sign"を指さすと、藍は「へぇ〜、お洒落な店だな。」と言った。

「でしょ?」
「こんなとこに、こんな雑貨屋なんてあったんだな。」
「まだ出来たばかりらしいよ。」

藍はお店のドアを開けてくれ、わたしを先に店内に促してくれた。

お洒落で可愛いものばかりが並ぶ店内にテンションも上がってくる。

わたしはとりあえず店内を見て回ると、その後ろを藍がついて歩いて来た。

すると、わたしはあることに気付いた。

「あ!無くなってる!」
「えっ?瑠衣が欲しかったキャンドル?」
「ううん、ここにツガイフクロウの置物があったの。木彫のやつで可愛かったんだけど、売れちゃったんだなぁ〜。」

ちょっと狙っていた商品ではあったが、値段が高く諦めていた物だった。

それから、お目当てのキャンドルが置いてあった場所へ向かうと、そのキャンドルはまだ売れずに残っていてくれた。

「あ、これこれ!わたしが欲しかったキャンドル!」
「おぉ、あって良かったな。あと1点だけじゃん。」

わたしはそのキャンドルを手に取ると、「あって良かったぁ〜。」とガラスの器に入っているキャンドルの為、大事に抱えた。

そして、会計に向かいお財布を出そうとすると、その前に藍が「クレジットで。」と店員さんに向けて言った。

「え、いいよ!自分で払うから!」
「今日病院を頑張ったご褒美だ。」

そう言い、藍はクレジットでキャンドル代を払ってくれた。

「ありがとう!」
「テンション上がって具合悪くなってないか?帰ったら薬飲んで、少し休めよ?」

藍はそう言うと、割れないようにエアーパッキンで包んで貰ったキャンドルをわたしに手渡した。

わたしはそれを受け取ると、大事に抱え込んだ。