仄かに香るメロウ


「じゃあ、今日はお祝いだな!何食べたい?」
「やっぱりラーメンでしょ!」
「祝いでラーメンかよ、でも瑠衣らしい。」
「いいでしょ?ラーメン好きなんだから!」
「いいよ。あとは、会計だけか?」
「うん。」
「俺も今日は午前診療だけで終わったから、一緒に帰ろ。」

そう話していると、会計受付から「篠宮様、篠宮瑠衣様。」と呼ばれた。

まだ"篠宮瑠衣"と呼ばれてくすぐったい気持ちだ。

「あ、呼ばれたから行ってくるね。」
「うん、じゃあすぐ着替えて行くから、関係者入口のとこでな。」

そう言い、手を振り一度別れたわたしたち。

昨年、わたしのカルテが無くなる事件があってから、岡田さんはこの病院で見なくなった。

詳しくは知らないが、厳しい処分を受けたのは確かだった。

わたしは会計を済ませると、関係者入口の方へ向かった。

春の暖かい風が心地良く、病院周りに咲く桜の花びらが舞っていた。

すると、関係者入口からブルーレンズのサングラス姿の藍が出てきた。

「あ、医者から殺し屋になった。」
「それ前も言ってなかったか?」
「そうだっけ?」
「そんなことより、ラーメン食べに行きますよ。俺の愛しい嫁の篠宮瑠衣さん?」

わたしは藍の腕にしがみつくと「わたし、醤油ラーメンね!」と言う。

「わかってる。帰ってからのデザートは、瑠衣がいいかなぁ〜。」
「今日は狼が檻を出る日かぁ!」

そんな会話をしながら、わたしたちは笑い合う。

今、わたしがここでこうして笑っていられるのは藍のおかげ。
藍が居てくれるから、わたしは生きてる。

わたしは今、最高に幸せだ。



―END―