仄かに香るメロウ


わたしがラーメンを好きになったきっかけは、藍だった。

幼少期、両親が離婚し、母が働き詰めで家に居ることが少なかった為、わたしはカップ麺と菓子パンを食べて育ってきた。

母は夜遅くに帰って来ては、ストレスからお酒を浴びるように飲み、酔ってはわたしに暴言を吐いた。

"お前なんて産まなきゃ良かった。"

"あんたなんて居なきゃいいのに。"

酔っては繰り返し吐かれる母のその言葉に、わたしの心は擦り減っていく。

人間関係が苦手だったわたしは友達が居なく、いつも1人だった為、相談出来る人は居なかった。

そして、中学2年のある授業中、わたしはトイレに行くと先生に嘘をついて授業を抜け出すと、"立ち入り禁止"の屋上へとこっそりと上がって行った。

冷たい風に吹かれながら、柵のない屋上の低い塀に足を掛ける。

わたしは生まれてきちゃいけなかったんだ。

生きているとお母さんに迷惑をかけるだけ。

わたしなんて、、、居なくなった方がいいんだ、、、

そう思い、低い塀に両足を掛け、空を見上げて目を閉じ、飛び降りようとした、その時だった。

「何やってんだよ!」

その言葉と共にお腹を抱えられ、後ろに引かれ、転げ落ちる。

「危ないだろ!」

そう言ってわたしを抱えながら共に屋上の冷たいコンクリートの上に転げ落ちたのは、同じクラスの篠宮藍だった。