仄かに香るメロウ


それから次の週の病院受診日までに、わたしは一度だけリストカットをしてしまった。

治りかけの傷を見たら、また傷付けなきゃと思ってしまい、自分を傷付けたい衝動に負け、剃刀でやってしまったのだ。

不慣れで片手だけでガーゼをあて、自分で包帯を巻いてみたが上手くいかず、不細工な巻き方のままでいると、仕事から帰宅して来た藍は異変にすぐ気付き、「下手くそだなぁ。」とリストカットをしたこと自体には怒らず、包帯を綺麗に巻き直してくれた。


そして、黒木先生に呼ばれた心療内科受診日。

わたしは倦怠感と関節痛から自力で歩く事が出来ず、院内で車椅子を借り、藍に押してもらった。

「七海さん、1番の診察室の前でお待ちください。」

案内のアナウンスが流れ、車椅子を藍に押してもらいながら、診察室前に移動する。

その時、処置室前を通ると、処置室の中から看護士さんたちの会話が聞こえてきた。

「こないだ、七海さんのカルテ捨てたの岡田さんだったらしいよ。」
「え?!マジ?!」
「運悪く主任に見られてたみたい。」
「うわぁ、、、カルテ捨てるとか、もうクビだよね。」

え、七海って、、、わたしのこと?

わたしのカルテが捨てられてた?

捨てたのは、岡田さん?

わたしは、看護士さんたちの会話から、どれだけわたしが岡田さんに嫌われているのかを知った。

だからわたし、今日黒木先生に呼ばれたのかなぁ。