仄かに香るメロウ


藍に連れられ食卓につくと、わたしの大好きな藍の作ったラタトゥイユがいつもの白い器に盛り付けられていた。

わたしはラタトゥイユの良い香りに「美味しそう。」と言い、スプーンを手に持った。

「どうぞ、召し上がれ。」
「いただきます。」

わたしはラタトゥイユを掬うと、フーフーしてからゆっくりと口の中へと運んだ。

口の中にトマトと、そしてわたしの好きなセロリの香りが広がり、セロリの食感がする。

「どうだ?」
「美味しい。」
「良かった。」

そう言って藍が微笑むと、食卓テーブルの上に置いてあった藍のスマホが鳴った。

藍は、スマホを手に取ると画面を確認し、「ん、黒木先生だ。」と呟いてから、電話に出た。

「はい、もしもし。篠宮です。、、、はい、家ですけど。」

そう言って、黒木先生から何か言われたのか、「え?」と険しい表情をする藍。

それから少しの間、黒木先生と電話で会話をして、「分かりました。来週の木曜日、うちのクリニックが休みなので、その日に伺います。」と言うと、藍は電話を切った。

「黒木先生、どうしたの?」

わたしがそう訊くと、藍は「来週、一度受診してくださいって。瑠衣の調子が悪そうだったから、カウンセリングとかしたいってさ。」と言い、それから「その時は、俺も一緒に行くから。」と微笑み、「いただきまーす。」と藍も食事を始めた。

さっきの藍の険しい表情が気になる。
何かあったのかな。

そう思いながらも、受診に藍が付き添ってくれることに安心したわたしは、藍が作ってくれたラタトゥイユを食べ進め、完食した。