仄かに香るメロウ


時間もいつの間にか23時になり、"まちがいさがし"で目が疲れてきたわたしたちは寝る支度をし始めた。

わたしが洗面所で歯を磨いていると、後ろから藍がやって来て、自分の歯ブラシを取る。

すると、歯ブラシに歯磨き粉をつけながら「それ、懐かしいな。」と藍が言った。

「ん?」
「ほら、そのリストバンド。」
「はふはひーへほ?」
「何言ってるか分かんない。」

わたしは歯を磨き終え、口の中をゆすぐと、「懐かしいでしょ?」と言い直した。

「まだ持ってたんだな。」
「当たり前じゃん。藍から貰った初めてのプレゼントだよ?」
「プレゼントって程でもないだろ。」
「でも、友達が居なかったわたしにとっては、初めて貰った物で嬉しかったんだぁ。しかも、バスケ部のエースから貰った物ですからね!」

そう、藍は中学の時、男子バスケ部に入部していて、その中でもダントツに背が高くプレイも上手だった。

「あの時から、藍はモテモテだったよね〜。」
「そうだったか?」
「キャーキャー言われまくってたじゃん!そのくせ、彼女の1人も作らないで、地味なわたしとラーメンばっかり食べに行ってたよね。」

懐かし過ぎる話題に笑う藍。

そして、わたしは「じゃあ、先に寝るね。おやすみー。」と言うと、洗面所を出て、藍の部屋へ向かう。

「おい、瑠衣!また俺の部屋で寝ようとしてるだろ!」

そんな言葉も聞こえないフリをして、わたしは藍のベッドに潜り込み、先に眠りについたのだった。