仄かに香るメロウ


「えっ?」と戸惑うわたしに、藍は「これ使ってないやつだから。瑠衣にあげるよ。」とちょっと照れくさそうにグレージュ色のリストバンドを差し出してきた事を今でも鮮明に覚えている。

あの時は、使ってないからくれたんだと思ったが、あとからよく考えてみれば"グレージュ"なんて男子が使う為に選ぶ色ではない。

しかも、まだ新品だった。

きっと、リストカットの跡を隠す為に一年中長袖を着ていたわたしの為にわざわざ買ってくれたのだろう。

そのリストバンドは、まだ大事に持っている。

わたしはお風呂から上がると、「お風呂いいよー。」と藍に声を掛けてから自分の部屋へ行き、自分の大切な物を入れている引き出しを開けた。

そこには、何年ぶりかに見るグレージュのリストバンドがあり、わたしは久しぶりにそれを手に取って、左手首につけた。

そして、わたしはスマホを片手に藍の部屋へ向かい、藍の広いダブルベッドにダイブすると、うつ伏せ状態でスマホをいじった。

最近、時間潰しにやっているアプリゲームの"まちがいさがし"。

わたしはそれを藍のベッドの上でやっていた。

すると、30分程してからスウェット姿の藍が部屋に入って来て、「人の部屋で何くつろいでるんだよ。」と言い、わたしの隣に寝そべった。

「まちがいさがし!」
「まちがいさがし?」
「最近ハマってるアプリゲーム。あと1つ見つけられないんだよね〜。」

わたしがそう言うと、わたしと並んでうつ伏せになり、「どれ、見せてみろ。」と言いながら、一緒に"まちがいさがし"をやり始める藍。

「あ、これじゃない?」

そう言って藍が画面にタッチすると、最後の1つが見つかった。

「うわ!こんな小さいの見つけらんないよぉ!」
「意外と面白いな。次は?」

そう言いながら、わたしたちはしばらく2人ベッドの上で"まちがいさがし"に熱中していたのだった。