仄かに香るメロウ


お風呂が沸くと、藍はいつも「先に入っていいぞ。」と言ってくれる。

そして、わたしは部屋着を持ち、洗面所へ向かう。

服を拭いで洗濯機の中に放り込むと、わたしはお風呂場へと移動し、温かい湯船に浸かった。

湯船に浸かりながら、わたしは自分の左手首を見つめた。

まだ残っているたくさんのリストカットの跡。

わたしは中学生の頃から、寂しさを感じるとリストカットをする癖があったのだ。

数え切れない程、たくさん自分を傷付けてきた。

今でこそ、やっとリストカットをしなくなったが、それは藍のおかげだ。

藍は、出来るだけ時間の融通がきくようにする為に自分のクリニックを開院して、時間通りに家に帰って来られるようにしてくれているのだ。

それは、わたしが家に1人でいる時間を増やさない為だった。

仕方なく大学病院に週に一度だけ当番医として行っているが、それは断り続けて、渋々"週に一度だけなら"という契約で受けたものだった。

藍がそばに居てくれる。
藍はいつもわたしの味方で居てくれる。

その安心感から、わたしのリストカット癖は減っていき、今に至るのだ。

そして、リストカットの跡を見ていて、わたしはあることを思い出した。

あれは、中学3年生の頃だったかな。

突然、藍から「これやる。」とリストバンドを渡されたのだ。