仄かに香るメロウ


白いカップとお皿に盛りつけられた、ラタトゥイユとシーフードピラフ。

わたしは手を合わせると、「いただきます。」と言ってから、まずスプーンを手に取り、ラタトゥイユを掬った。

そして口の中へと運ぶ。

わたしは「んー、これこれ。」と言いながら、藍の作ったラタトゥイユを味わった。

「瑠衣は、本当美味そうに食べるよなぁ。」

そう言いながら、わたしを食べる姿を優しい表情で眺める藍。

それはまるで、ご飯を食べる子どもを見るような眼差しだった。

「そんなに美味そうに食べてくれると、作り甲斐があるよ。」
「だって、本当に美味しいんだもん。食べれるって、幸せなことだよね。」

カップ麺と菓子パンで育ってきたわたしには、"食べれる"ということがどれだけ幸せなことなのか、身に沁みて感じていた。

そんなわたしを見て、藍は「そうだな。」と言うと、自分も食事についた。

「そういえばさ、藍って何で心療内科医になったの?というか、お医者さん目指してるなんて聞いたことなかったから、医学部行ったって聞いた時はビックリしたよ。」

わたしがそう言うと、藍はスプーンでピラフを掬いながら、「んー、きっかけは瑠衣だったかな。」と言った。

「え、わたし?」
「瑠衣はあの時、心の病にかかっていたと思う。でも、それって目に見えるものじゃないから気付かれにくいし、自分でもなかなか自覚できるものじゃない。」

わたしは藍の話を聞きながらピラフを頬張り、"あの時"を思い出した。

確かに、屋上から飛び降りようとするなんて普通は考えないことだ。

わたしはあの時、心の病にかかっていたんだなぁ。