「……そういえば、あいつら原宿行くんだよなあ」

 歩きながら呟く。

 都会の駅前で独り言を呟いたらそれはもう不審者確定なんだろうが、ここは田舎の畦道だ。

 どうせ誰もいないだろう。

 私はスマホを取り出し、さっき撮った田んぼの写真を眺めた。

「この写真自慢してやろう。滅多に見れない光景だぞ」

 いや、誰も羨ましがらないか。


 校外学習で美術館に行っても弁当の話しかしない人たちに、景色を愛でる心があるとは思えない。

「でも私はこの村嫌いじゃないかも」

「そうか、それは良かったね」

「え?」

 後ろから聞こえてきた声に恐る恐る振り向くと、カッターシャツを着た同い年くらいの男の子がいた。

 さっきまで誰もいないと思っていた道端の柳の下に、寄りかかるようにして立っている。

 男の子は悪戯っぽく目を細め、からかうような笑みを浮かべている。


 もしかして、全部聞かれてた?

「あはは……お、お暑うございますね……」