「ヤコ!」

 私も河川敷へと降りた。

 ヤコの姿を確認したかったけど、人が集まりすぎていて全く見えない。

 人を押し退けられるほどの度胸がない非力な私は、見物人の話に聞き耳を立てることしかできなかった。

「誰か親は呼んだのか?」

「ああ、野田たちが呼びに行った。とにかく意識は戻ったぞ」

 良かった、意識戻ったんだ。

 ヤコの無事に安堵したとき、何人かの人に連れられてヤコの母親らしき女性がやって来た。


 母親らしき人は青ざめた顔で叫んだ。

「涼!」


「……えっ?」

 無意識に間の抜けた声を上げていた。


 涼? 誰、それ。


 私は近くに同い年くらいの女の子を見つけ、声をかけた。

「ねえ、あの子のこと知ってる?」

 声をかけられた女の子は、私の顔を見て怪訝そうな顔をしつつも答えてくれた。

「知ってるよ。同じ学校だもん」

「何て名前か分かる?」

「うん。東原涼くんだよ」

 涼。

 彼の名前は、涼。


「ヤコじゃないの……?」 

 私は無意識のうちに呟いていた。


 しかし女の子は顔を曇らせながら言った。

「ヤコって、誰のこと?」