次の日、いつもの場所に向かう途中、木に提灯がいくつもぶら下がっているのを見つけた。
道端にのぼりも立っている。何かあるようだ。
「何かイベントでもあるの?」
柳の木の下にヤコの姿を見つけると、私は開口一番にそう言った。
ヤコは読んでいた本から目を上げ、
「明日夏祭りがあるんだよ」と教えてくれた。
そう言えば、電話したときに叔母さんがそんなことを言っていた気もする。
ここに来てから色々ありすぎて忘れていた。
「ヤコ、夏祭り一緒に行かない?」
「香織と? もちろんいいよ。それじゃ、えっと……いつもより一時間くらい早くここに来られる?」
「オッケー。めっちゃ楽しみ。最後の思い出作りってやつだね」
何気なくそう言うと、ヤコは「ああ、そっか」と呟いた。
「……香織はもうすぐ帰るのか」

