「あんた、名前は?」 「教えませんし、くだるなんて言ってない、ばか」 「俺に惚れ惚れした視線送っておいて今更なんだよ」 「送ってなんか――」 唇に人差し指があたり、有無を言わせない表情に、私は苦い顔をせざるを得なかった。 「仁彩(にあ)です……」 「ふっ……言えるじゃねぇか。ちゃんとしっぽ振っとけ」 「む……」