嘘も愛して






 舞台には、黒いキャップからパープルの短髪が見え、毛先にかけてピンクよりのラベンダー色に染めている男が一人。

 ポケットに手をつっこみ、飄々としている姿からは想像できないが、状況が彼の強さを物語っている。


「誰だろう」


「彼は……百道くんですね。何を考えているのか分からない人です」

 いつの間にか傍まで来ていた王様の下僕が、親切にも教えてくれる。


「実力はありますが奥底が見えない彼を欲しがる人なんていませんよ」

 百道くん、か。王様の次に今年の新入生の中では強いらしいのに、何故か煙たがられている。強いが正義な社会のくせに。


 下僕の後ろから赤メッシュがちらつく。王様は私の姿を認めると意地悪に笑いかけてきた。


「俺に跪く気になったか?」


 試合を見ていたことを知って言っているとしたら本当に俺様思考。そりゃかっこよかったけど……。



「僕の宝物にちょっかい出さないでくれる?」

 空周と私の間に視界を塞ぐように立つ研真。その背中に隠れる形になった私は影から王様の様子を伺う。


「あ?てめぇに話しかけてねぇぞ、ちっこいの」

 案の定凄んで見下ろしていた王様に、私は慌てて二人を引き離す。