「……遅かったね。水、出なかった?」
よろよろと部屋に戻ると、ライリーが意地悪を言う。
「オーリーの物好き」
「ううっ……だって、つい」
疲れた。
何だか、今になって、どっと疲れが押し寄せてきて、すやすやと眠るビーの横に潜り込む。
あどけない寝顔。ぷっくりした頬っぺたに、心が洗われていくようだ。
いっそ、全部浄化してほしい。
「んにゃ……オーリー……帰っちゃいや……」
勝手なお願い事が聞こえたのか、可愛すぎる寝言。
ライリーと顔を見合わせて小さく笑うと、コンコンと窓が鳴る。
「こっちでこれくらいなら、クルルは本降りかもしれないね」
「ええ」
ニールはまだ起きているだろうか。
今日の後始末に追われてはいないだろうか。
この雨が無駄になりませんように。
もっともっと、力を尽くすから。
「もう寝よう。忘れた方がいいよ。あと、言ったでしょ。夜中、うろうろしない方がいいよ」
「……本当ね」
すぐに忘れるのは無理だけれど。
再び顔に熱が集まるのを耐え、どうにか目を瞑る。
額への口づけだけで、あんなにドキドキするのに。
本当に、いつか知ることができるのかなーーそんなことをぐるぐると考えながら。



