ハッとして見上げれば、ニールが気まずそうに咳払いをした。
彼の腕は、いつのまにかオーリーの腰に回されーーしかし、もう片方はずっと拳をつくっていたのだろう。褐色の指先が、少し色を失うほど。
「ロイ殿。彼女を待たせたのは私です。何の約束もせず、何の誓いもなく許されるには、あまりに長い時間でした。これ以上のお叱りは私が受けます。そうでないと……」
「……でないと?どうする、ニール?」
腕を組み、わざとらしくやや下から覗きこもうとする瞳は意地悪だ。
からからわれていると分かっていても、真面目に返すしかニールには術がないと知っているくせーー。
「そうですね。自室に連れて、隠してしまいましょうか。そうすれば、オーリーへのお説教は僕一人でできますからね。アルフレッド様がお見えになるまでは、ゆっくりと」
ーーに?
にっこりと目を細め、予想に反してニールはそんなことを言った。
一人称を変えたのは、やはり意図してのことのようだけれど。
(~~っ……!?)
オリヴィアの耐性を遥かに越え、シューシューと音を立て熱が全身から放出されているやうにすら感じる。
と、同時に、ロイが楽しげに笑いだした。



