虹橋の先へ



禁断の森と同じくらい、今では口にすることがない名前にドキリとする。
だが、本人は僅かに眉を上げただけで、すぐに肩を竦めてみせた。



「僕は、けしてお伽噺に出てくる王子様じゃないよ。理想は今も追い求めているし、叶えられると信じているけど。夢は横になって見ているうちは叶わない。目を覚まして、起き上がって初めて現実となる。そう思って、僕は動いている」



交錯する色違いの瞳。
どちらも美しく澄んでいて、それでいて互いを挑発するかのような輝き。



「……ふ。どうあれ、王子様であることは否定しないところがお前らしいな。ロイ」

「もちろん。僕はいつまでも経っても王子様だよ。だって、僕にはお姫様がいるんだもの。当然でしょ」


ロイの目を受け止めてから、キャシディが横へと流す。
まるで何事もなかったかのように冗談まじりに話は進んでいるが、オリヴィアの胸はまだ早鐘を打っている。


「ならば、うちの王子様の気持ちも察してやってくれないか。自分を想って飛び出してきたお姫様が、如何に身内とて他の男に叱られるのをただ見て堪えるのは辛いものだ」