跪いたのは、クルル王・キャシディのもと。
距離が近づくにつれ、ロイすら見ないように意識した。
「ご迷惑をお掛けして申し訳ありません、キャシディ様。此度の件については、一切の責任は私にあります。どうか、その他の誰もお咎めになりませんように。無礼を承知でお願い申し上げます」
争っていた者たちを除いて、他の誰も悪くない。
近くに寄りながら挨拶もせず、それを言うなら勝手に押しかけておきながら、騒ぎを大きくする原因となってしまった。
仲裁できないどころか、余計な人力を使わせ、事もあろうに同盟国の王弟を危険な目に遭わせたのだ。
「久しぶりだな、オリヴィア王女。どうか、立ってくれ。でないと」
久しぶりに聞く声が、どうも様子がおかしい。
そっと上目で窺ってみれば、気のせいか肩が震えている。
「笑うに笑えない。いや、聞いてはいたのだ。しばらくお目にかからないうちに、より美しく、勇敢に成長されたと。くくっ。確かにその通り。アルフレッドの親馬鹿に磨きがかかるのも頷ける」
ニールに引っ張り上げられ、ぽかんと立ち尽くしていると、キャシディは我慢の限界とばかりに豪快に笑いだした。



