「オリヴィア」
手当てと着替えを済ませ、通された先に皆の姿が見え、叱られる恐怖よりもまず、ほっとした。
何しろ、落ち着かなかったのだ。
支度を手伝ってくれる女性たちは、皆チラチラ視線を送ってくるし、気のせいでなければ、ひそひそ話をされていたと思う。
この時代とはいえ、トスティータからの来客はまだ珍しいだろうし、仕方ないか。ーーいや。
(王女様。とりわけ、ニール様の婚約者なんだもの。そりゃあ、気になるわよね……)
この件が、まさか評判を上げたとは思えない。
彼女たちの自分に対する心証を思うと、落ち込んでしまう。
「叔父様……」
ロイは駆け寄ってくれなかった。
騒ぎを思えば、当然のことだ。
来賓室に通されたとは思えないくらい、むしろ喚問されたかのような緊張感が一気に押し寄せ、すうっと息を吸い込んだ。
頭を深く下げ、しかし、前へと進む。
ロイ、それにクルル王・キャシディ。
二人のもとへ真っ直ぐと歩く。
一歩後ろに控えたニールのことは、けして見ないようにして。



