ぽつ、ぽつ……。
城に着いた頃、突然降ってきた雫に驚いて空を見上げた。



「まだ晴れてるのにね。きみが来てくれたのを喜んでいるみたい」



指の背で拭われ、彼の肌が吸収するまでもなく、すぐさま蒸発してしまいそうだ。



「ニール様、ご無事でしたか……!まったく、急に飛び出して行かれたので、こちらは大慌てでしたぞ」


甘く目を細められ、どこか他に目の遣り場を求めていたところ、バタバタと男性が駆け寄ってきた。


「すまない。だが、私が出たくらいで騒いでどうする。不測の事態は起こりうるものだし、そういう場合、いちいち承認を待っている余裕はない。私が自身に命じる方が早いだろう」

「それはそうですが……しかし、貴方様が出向く前に役人も兵もおります。物事には順序というものがですな」


全くその通りだ。
翡翠の森が共有の場で、どちらの管轄とも決まっていなくても、互いの国の役人や警らが沈静化を計るべきだったのだろう。


「悪いが、特に今回は私にとって最優先事項だった。それより、彼女に医師を」

「大した怪我では……

「言わなかったかな、オーリー。僕は怒っていると。今、ここで、じきに兄上やロイが来る公衆の面前でお説教されたい?僕は恥ずかしくもなんともないから、別に構わないけれど」